てっちゃんdaily

都内国立大学院理系1年生。留学体験や就職活動に向けた企業研究、株式投資など投稿していきます。

株式会社リコーの企業研究(2019年度3月期)

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wikipediaより
 

株式会社リコーの企業研究です。企業の理解を深めるために一連の情報をHPリンクとともにまとめてあります。この記事では投資家向け資料の連結決算概要から各セグメントの情報や考察を行いました。どちらかというと技術系の学生向けになっていると思いますが、事務系の学生にも役立つ情報をまとめてあると思います。

では、よろしくお願いします。

 

 

 

代表取締役

氏名

山下 良則

経歴

1980年(昭和55年)3月  広島大学 工学部 卒業

略歴   1980年(昭和55年) 3月  株式会社リコー 入社

2008年(平成20年) 4月  Ricoh Electronics, Inc. 社長

2010年(平成22年) 4月  グループ執行役員

2011年(平成23年) 4月  株式会社リコー 常務執行役員

2011年(平成23年) 4月  〃       総合経営企画室長

2012年(平成24年) 6月  〃        取締役[現職]

2012年(平成24年) 6月  〃       専務執行役員

2013年(平成25年) 4月  〃       内部統制担当

2014年(平成26年) 4月  〃            ビジネスソリューションズ事業本部長 [現職]

2015年(平成27年) 4月  〃       基盤事業担当 [現職]

2016年(平成28年) 6月  〃       副社長執行役員[現職]

代表メッセージ

[2]一部抜粋

リコーグループは1936年の創業以来、世の中にイノベーションをもたらす製品やサービスを提供し、お客様とともに成長してきました。創業者・市村清による「人を愛し、国を愛し、勤めを愛す」という創業の精神(三愛精神)を基盤とした「リコーウェイ」を企業活動の理念・価値観に据え、「世の中の役に立つ新しい価値を生み出し、提供しつづけることで、人々の生活の質の向上と持続可能な社会づくりに積極的に貢献する」ことを使命としています。また、「世の中にとって、なくてはならない信頼と魅力のブランドでありつづける」ことを目指す姿に掲げています。

企業理念

[3]一部抜粋

リコーウェイは、リコーグループの日々の判断や活動の基礎となる普遍的な理念(創業の精神、私たちの使命・私たちの目指す姿・私たちの価値観)です。

設立年・資本金・株式公開・事業拠点

[4]

設立年

1936年2月6日

資本金

1,353億円(2019年3月31日現在)

株式公開

744,912,078株

事業拠点

事業拠点についてはHP[5]を参考にして下さい。リコーでは勤務地を選択できるようです。[6]

 

詳しい事業内容

  1. オフィスプリンティング分野

マルチファンクションプリンター、複写機、プリンター、印刷機、広幅機、FAX、スキャナ等機器、関連消耗品、サービス、サポート、ソフトウェア等

  1. オフィスサービス分野

パソコン、サーバー、ネットワーク関連機器、関連サービス、ソリューション等

  1. 商用印刷分野

カットシートプロダクションプリンター(PP)、連帳PP等機器、関連消耗品、サービス、サポート、ソフトウェア等

  1. 産業印刷分野

インクジェットヘッド、作像システム、産業プリンター等

  1. サーマル分野

サーマルメディア等

  1. その他分野

光学機器、電装ユニット、半導体デジタルカメラ、産業用カメラ、3Dプリント、環境、ヘルスケア等

 

 

業績

2017年度(2018年3月期)

売上高

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営業利益率

 

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連結売上高および営業利益率

2017年4月1日より事業領域の再定義を行ったため、各セグメントの売上高と利益率は2017年3月期からのデータを示す。

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オフィスプリンティング事業

オフィスプリンティング事業は減少傾向にある。特に2018年度の大幅な営業利益の減少に関しては2008年に米事務機販売大手アイコンオフィスソリューションズ(現リコーUSA)を約1,600億円で買収した際ののれん計上(1,458億円)である。

こののれん代については時事問題の章にて言及する。

 

ちなみにのれんとは、企業の買収、合併で支払った金額のうち、買収先企業の純資産の差額のことである。

例えば、A社がB社を100億円で買収した。

しかし、B社の純資産は80億円しかない。

この場合、A社はB社には80億円の価値がないにも関わらず、100億円で買収したため、差額の20億円がのれんということになる。

 

この結果2018年度は一時的に営業利益率が下がったものの2019年度は採算を重視した売価適正化と、構造改革効果創出による営業費用削減などを進めた結果、営業利益率が向上した。

 

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オフィスサービス事業

オフィスサービス事業については上昇傾向。

国内において、企業の働き方改革推進などに伴うIT機器需要拡大や業種業務ソリューション及びITサービスなどの売上が伸長したことに加えて、米州でドキュメント管理サービスなどのお客様の業務支援を行うサービスが拡大したことなどにより、増収。

2018年度の営業利益率についてはオフィスプリンティング分野同様にのれん計上(269億円)による一時的なものである。

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商用印刷分野

商用印刷分野の売上高は、ほぼ同売上。

カットシートのカラー機を中心に稼働台数増により、関連消耗品及びサービスが堅調に伸長しましたが、ハードの売上が減少しました。

構造化改革により、販売費と管理費の減少より、営業利益率については上昇。

産業印刷分野の売上は3Dプリンターなど先端プリンティング技術の拡大により、売り上げは上昇傾向。

中国市場において、米中貿易摩擦の影響などによる中国市場でのインクジェットヘッドの販売鈍化の影響を受けたものの、欧米において主力のインクジェットヘッドの販売が堅調に拡大、また、新たな成長領域として取り組んでいる産業プリンターの販売も全世界で拡大したことなどにより、前連結会計年度比増収となりました。営業損益は、最大の市場で ある中国市場でのインクジェットヘッド販売減少の影響と、事業成長に向けた製品開発経費の増加、のれん等の固定資産の減損損失計上等もあり、71億円の損失となりました。

 

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サーマル分野

サーマル分野は売り上げについては上昇傾向。利益率は下落。

サーマル分野の売上高は、国内外ともに売上が堅調に推移し、前連結会計年度に比べ 8.0%増加し 663億円と なりました。営業利益は、原材料費高騰の影響等による営業費用の増加などにより、前連結会計年度に比べ 15.7%減少し 42億円となりました。

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その他分野

その他分野について、株式売却益など一時金が計上されているため、売上および利益率は急峻であるが、それを除くと、増収増益。

産業プロダクツ事業は主に自動車業界に、Smart Vision事業は主に不動産業界に、リコーの強みであるキャプチャリング技術や画像処理技術を活かした光学デバイスを提供し、顧客基盤を拡げています。

 

営業業績の分析

[8]

2018年度の世界経済は、前連結会計年度からの回復基調を維持し、全体として堅調に成長しました。日本、米国で は、緩やかな経済成長が続いており、欧州もBrexit(英国のEU離脱)やトルコ・ショックなどによる先行きの不透 明感はあるものの、総じて堅調に推移しました。一方で、中国は米中貿易摩擦の影響が不安視されますが、他の新 興国においては持ち直しの動きが見られます。

そのような経済情勢の中で、当社グループの主力事業である事務機の需要は、前連結会計年度に引き続き、先進国 での緩やかな需要の減少と、新興国での需要拡大が進みました。金額ベースでは、全需の8割を占めるA3MFPが先進 国を中心に緩やかな減少が続くものの、A4MFPについては、先進国、新興国いずれも需要の拡大が見込まれていま す。消耗品に関しては、金額ベースで先進国での緩やかな減少が見込まれる一方で、製品需要の拡大により新興国 での拡大が見込まれています。また、オフィスにおける業務IT化の需要が全世界的に高まり、ITサービスに対する 需要は堅調に拡大しました。

 

 

向先地域別売上高

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向先売上構成比に関しては、上図の通りである。国内外比は40 % :60 % となっている。

成長性

経済的動向

経済的動向に関しては、業績見通しが上がっているものの、世界経済や需要に関する内容は書かれていない。

業績見通しは、[5]P.8に記載あり。売上予想は0.2 %減の20,100億円(2兆100億円)、営業利益は15.2 %増の1,000 億円となっている。

 

研究費割合

[9]より、2018年度110,091百万円(売上高の5.3 %)、2019年度111,013百万円(売上高の5.5 %)となっている。平均並み。

個人的考察

成長性について

 構造化が始まったばかりであるので、まだまだ誰にも分らないであろうが、構造改革からもわかる通り、オフィス分野の衰退は避けられないため、新たな成長分野として、プリント技術デジタル機器およびソフトウェア技術を融合させた新たなソリューションの2つが挙げられる。

 

時事問題

第19次構造改革について

[10]に詳しい構造改革について記載されている。構造改革期間は2017年4月から2020年3月まで。現状の進捗状況については[11]に記載されている。

成長戦略は3段階に分かれている。

  1. 成長戦略0
  2. 成長戦略1
  3. 成長戦略2

順に引用、解説していく。

まず、成長戦略0は基板事業の再起動。これは、ロボット化やAIによる生産環境の低コスト化、高効率化である。売上原価率と販売管理費の減少はまだ大きく結果には出てないものの従業員1人当たりの売上高は2016年比5 %も上昇している。(これは人員削減によるものなのか・・・?)

 

結局、生産環境の自動化は労働者のリストラにつながることでもあるため、今後もこの傾向は続くと考えられる。

 

次に成長戦略1は成長分野への投資、拡大そして、準備である。リコーの今後の成長分野として、プリンティング技術を成長分野として改革およびM&Aを行っている。

 

ColorGATE Digital Output Solutions GmbHの買収によりソフトウェア技術力を強化および、株式会社エルエーシーの買収により高粘度のインク塗装技術を獲得したことが挙げられる。前者はプリンティング分野ではなく、オフィスサービス事業であるが、ともかく2019年3月期および次期の2年間で合計2,000億円の買収を計画している。買収に関しては後程まとめる。

 

そして、最後に成長戦略2はデジタル機器およびソフトウェア技術を融合させた新たなソリューションとして、働き方構造化に対して新製品を生産する。ソリューション例として、電子黒板やテレビ会議、WEB会議システムなどが挙げられる。

具体的な数値目標として、引用した画像を添付しておく。

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事業領域の財務目標(リコーHPより、引用)

これまでの買収について

これまでに行った買収について3社挙げておく。

 

事務機販売大手アイコンオフィスソリューションズ(現リコーUSA)

[12]リコーが2008年に約1,600億円で買収したが、現状は約2,660億円ののれんが発生している。この理由は単純で、ペーパーレス化によって、複合機の需要が落ち込んでいるから。特に先進国で進んでおり、需要回復は見込めない。

今までのビジネスプランとして、(キヤノンニコンなどの複合機を扱っている会社)は複合機を出荷した後、紙やインクなどの消耗品で安定的に利益を上げるものであったが、その転換点が来たことにより、構造改革を急ピッチで行っているということであろう。(ちなみに2010年ごろはプリンターの売り上げが計上されている画像&ソリューション分野の構成比は70 %を越えている。)

ColorGATE Digital Output Solutions GmbH

2019年度3月期に計上されていた買収。成長戦略2で用いるソフトウェア強化のための買収。

株式会社エルエーシー

新プリンティング技術を強化するための高粘度のインク塗装技術。

 

参考文献

[1]代表取締役 社長執行役員 交代のお知らせ | リコーグループ 企業・IR | リコー

[2] トップメッセージ | リコーグループ 企業・IR | リコー

[3] リコーウェイ / リコージャパン | リコー

[4] https://jp.ricoh.com/company/data/

[5] 国内事業所 | リコーグループ 企業・IR | リコー

[6] 勤務先の選択について | 好きな街で、好きなだけ。 RICOH JAPAN Recruit web-site 2020

[7]https://jp.ricoh.com/-/Media/Ricoh/Sites/jp_ricoh/IR/financial_results/h30_3/pdf/flash_report.pdf

[8]https://jp.ricoh.com/-/Media/Ricoh/Sites/jp_ricoh/IR/financial_results/h31_3/pdf/flash_report.pdf

[9]主な財務指標 | リコーグループ 企業・IR | リコー

[10] トップインタビュー | リコーグループ 企業・IR | リコー

[11]第19次中期経営計画の進捗 | リコーグループ 企業・IR | リコー

[12] リコー、北米事業で減損の恐れ 需要低迷、販社の収益改善遅れる - SankeiBiz(サンケイビズ)