てっちゃんdaily

都内国立大学院理系1年生。留学体験や就職活動に向けた企業研究、株式投資など投稿していきます。

シャープ株式会社の企業研究(2018年度)

シャープ株式会社の企業研究です。企業の理解を深めるために一連の情報をHPリンクとともにまとめてあります。この記事では投資家向け資料の連結決算概要から各セグメントの情報や考察を行いました。どちらかというと技術系の学生向けになっていると思いますが、事務系の学生にも役立つ情報をまとめてあると思います。

では、よろしくお願いします。

 

 

代表取締役

氏名

戴 正 呉(Tai Jeng-wu)

経歴

台湾の大同工学院(現大同大学)機械学部

台湾の総合電機メーカーTatung(大同)社に入社

1985年鴻海精密工業

2001年董事代表人(日本語でいう代表取締役みたいなもの)

2004年グループ副総裁

2016年シャープ株式会社代表取締役会長兼社長

 

企業理念

経営理念|会社情報:シャープより引用

二意専心

誠意と創意

設立年・資本金・株式公開・事業拠点

設立年

1935(昭和10)年5月

創業年

1912(大正元)年

資本金

50億円(2018年3月31日現在)

株式公開

532,416,558株

事業拠点

主要事業所(アクセスマップ)|会社情報:シャープ

 

 

詳しい事業内容

スマートホーム

携帯電話、電子辞書、電卓、電話機、ネットワーク制御ユニット、冷蔵庫、加熱水蒸気オーブン、電子レンジ、小型調理機器、エアコン、洗濯機、掃除機、空気清浄機、扇風機、除湿機、加湿機、電気暖房機器、プラズマクラスターイオン発生機、理美容機器、太陽電池、蓄電池、パソコン等

スマートビジネスソリューション

デジタル複合機、インフォメーションディスプレイ、POSシステム機器、電子レジスタ、業務プロジェクター、各種オプション・消耗品、各種ソフトウェア等

IoTエレクトロデバイス

カメラモジュール、カメラモジュール製造設備、センサモジュール、近接センサ、埃センサ、ウエハファウンドリ、CMOC・CCDセンサ、半導体レーザー、車載カメラ、FA機器、洗浄機等

アドバンスディスプレイシステム

液晶カラーテレビ、ブルーレイディスクレコーダー、オーディオ、ディスプレイモジュール等

業績

2017年度(2018年3月期)

売上高

  (単位:百万円)
  売上高(2017年度) 売上高(2018年度) 構成比(%) 前年比(%)
連結売上高 2,427,271 2,400,072 - 98.9
セグメント別 - - - -
スマートホーム 595,132 681,330 28.4 114.5
スマートビジネスソリューション 318,074 319,215 13.3 100.4
IoTエレクトロでナイス 462,297 441,231 18.4 95.4
アドバンスディスプレイシステム 1,051,767 958,295 39.9 91.1
共通およびセグメント間取引除去 △ 89,940 △ 76,051 - -

営業利益率

  (単位:百万円)
  営業利益(2017年度) 営業利益(2018年度) 利益率(%) 前年比(%)
営業利益 90,125 84,140 3.5 93.4
セグメント別 - - - -
スマートホーム 43,723 48,018 7.0 109.8
スマートビジネスソリューション 21,969 21,699 6.8 98.8
IoTエレクトロでナイス 3,332 2,894 0.7 86.9
アドバンスディスプレイシステム 37,041 27,066 2.8 73.1
共通およびセグメント間取引除去 △ 15,942 △ 15,538 - -

営業業績の分析

2019年3月期決算短信p2引用

“当連結会計年度における我が国経済は、雇用情勢の改善や個人消費の持ち直しなどにより、緩やかに回復しましたが、輸出や生産の一部に弱さがみられました。また、海外の景気は、米国で回復が続く一方、ユーロ圏の一部で減速傾向を示したほか、中国では緩やかに減速しました。

こうした中、当社グループでは、事業ビジョン「8KとAIoTで世界を変える」の実現に努めました。また、事業環境を勘案し、今後のさらなる成長のため、「量から質へ」の転換に取り組み、収益力の強化と財務体質の改善を進めました。”

 

向先地域別売上高

2018年度のアニュアルレポートの国内および海外売上高によると、国内売上が656,144百万円で海外売上が1,771,127百万円となっており、構成比は国内がおよそ25 %で海外が75 %となっている。

しかしながら、海外売上の内訳については資料がなかったため、不明である。

 

成長性

経済的動向

2019年3月期決算短信p4引用

“国内経済は、雇用・所得環境の改善が続き、各種経済対策による効果もあるため、緩やかな回復が続くと思われますが、一部に弱さも見られます。海外の景気は全体として回復の継続が見込まれるものの、アジアや欧州では弱さも見られ、中国で景気の緩やかな原告が続く見通しです。また、米国における各種政策ならびに金融資本市場の動向、中国をはじめとするアジア諸国の経済情勢、英国EU離脱問題の影響、通商問題の動向などにも、留意する必要があります。

一方、当社は、8K+5GEcosystemとAIoTの最先端技術を核に次々と新規事業を創出し、様々な事業分野でイノベーションを実現することを目指しています。

2019年度は「グローバル事業拡大」「新規事業の創出」「M&A/協業」「競争力強化」を進め、特徴商品・サービスを創出するとともに、グローバルブランド企業”SHARP”の確立を加速していきます。

そして、中長期的には、事業ビジョンである「8KとAIoTで世界を変える」を具現化していきます。”

研究比割合

2018年度の研究開発費はまだ出ていない。第3四半期連結累計期間における研究開発費(2018年4月1日から2018年12月31日)は2018年有価証券報告書より、85,903百万円(売上高の4.8 %)となっている。

また、2017年度アニュアルレポートより2017年度の研究開発費は100,536百万円(売上高の4.1 %)となっている。

個人的考察

成長性について

シャープの場合は技術力の問題ではなく経営の問題が大きい。個人的な見解としては、ディスプレイの需要に関してはなくなることがほぼないように思う。つまり、長期的に見たら成長過程にあるように感じる。2018年度もまだ利益率は低いものの今後安定して稼いで行ける事業があるため、軌道に乗れば伸びるのではないかと思っている。また、8Kテレビでは国内企業シャープ、ソニーパナソニックでは、シャープが頭一つ抜けている。これはシャープに対してソニーパナソニックは8K需要に懐疑的ということである。正直まったくどうなるかはわからないが、オリンピックを8Kで見たいという需要がどの程度あるのかに依存するが、どうなんだろうか。。。

 

時事問題

いくつかのサイトを参考に1990年後半あたりから振り返っていく。

1990年代後半の歴史

まず、シャープの礎(かつ爆弾)となる液晶テレビ事業の発展について。[6]当時の社長は町田勝彦氏である(1998年から社長。後、会長職)。1999年に世界初の20型液晶テレビの販売をすると、2002年には三重県亀山に大型液晶パネルを新設。これがかの有名な世界の亀山ブランドである。液晶テレビ専門工場である亀山産表記の安心感が買われ、爆発的に販売数を伸ばしていく。[7]参考文献によると1997年には生産能力シェアでは約80 %のシェアがあった。そして、今の世界シェアトップである韓国が1997年から、また、台湾が1999年から液晶の生産を開始する。この時のシャープは完全一本足経営である。1990年代後半から2000年代前半は日本のテレビメーカーはシャープ、松下電器(パナソニック)、ソニーの3社が挙げられるが、現に安定した経営を続けるパナソニックソニーに対し、軽破綻寸前までいったシャープである。これが上記の3メーカーの大きな違いであると私は考えている。

2006年には生産能力シェアは13%まで下落。10年間で約80%から13%である。そして対照的に韓国、台湾の生産シェアは各々38 %,45 %となっている。この年でさえ、当時の町田社長は液晶一本足経営のリスクに対して「液晶の次は液晶でいいじゃない」と笑ったそうだ。

韓国、台湾企業によるシェアの拡大の経緯

ここで、少し韓国、台湾企業シェアの拡大に軽く触れる。

投資方法による違い

参考文献[9]によると、投資方法の違いについて深く書かれている。まず、日本の設備投資は前年会計期の利益に比例して投資をしている。よって、2000年には韓国や台湾に対して1.5倍ほどの額の投資が行われていた。(画像については著作権の関係上引用を控えるので、[9]のp149を参照してください)

また、テレビ事業の投資には資金調達から建設、設置、立ち上げまでに約1年半の期間を要する。しかし、この2000年の投資により設備が稼働した2001年には需要が落ち込み大きな損失を出した。

これに対し、韓国は2001年の利益が最も落ち込んだ年に大きな投資を決断し、02,03年と投資を行った。台湾は特に2003年に日本の4倍近い投資を行った。

文献[9]をまとめると、日本の投資は長期的なビジョンを持った投資よりも、前期利益に影響された投資を取る傾向がある。それに対して、韓国はビジョンに基づく内部調達、積極投資。台湾は外部調達、積極投資。

*ただし、シャープの場合は韓国の投資形態に酷似していた。

技術流出による影響

これは言うまでもなく事実であるだろう。なぜ韓国台湾企業がテレビ事業を開始してたった6年で世界シェアが約80%あった日本のシェアが抜かされたのかを考えれば火を見るより明らか。基本的に国内技術者の引き抜きは韓国台湾中国とどこでも行われている。好待遇を餌に引き抜きされる日本人技術者は非常に多いが、冷静に考えると海外企業が必要なのは技術者ではなく、技術であることを考えれば、日本の給与の2倍も3倍も払って技術を手に入れることは研究開発で何年もかけて研究者を雇うコストを考えたら断然安い。ということである。こういった引き抜き技術者は短期的に好待遇で働くことができるが数年もたてば技術者の持つ技術も価値がなくなり切り捨てられることもある。

 

2007年からの歴史

2007年からシャープ5代目社長の片山幹雄氏である。この時、町田元社長はシャープの歴史で初めて代表権のある会長となり、社長と会長の二人体制という経営を行った。

しかし、社長が変わったが、液晶一本足経営は続き、経営が上向き時にリスク分散などといった消極的な意見が受け入れられることはなく、片山氏も液晶に投資を続ける。そして、2008年3月期に3兆4,177億円の過去最高売上を計上する。

2008年リーマンショックが起きる。リーマンショック後の2009年3月期の純損失は1,258億円となった。そして2009年に大型テレビ向け液晶パネルの世界最先端工場として堺工場の稼働が開始。4,200億円の巨額設備投資であった。しかしながら需要はリーマンショックでさらに低下し、5割の低稼働が続き、資金繰りが悪化、業績の悪化から一気に経営危機まで突き進んだ。

2011年度最終純利益は△3,760億円。2012年度最終純利益は△5,453億円。

2012年からの歴史

[11]2012年1月にシャープの経営危機が表面化。[12]経営再建として、台湾鴻海グループと戦略的業務提携を構築し、第三者割当増資により約670億円の増資。そして、6代目片山幹雄社長の退任に伴い、奥田隆司社長が就任。[13]しかし、それからも特にこれといった結果は出ずに経営正常化も果たせなった。唯一手がけたのは従業員3000人のリストラのみで、結果として、リストラが引き金となり、1年足らずで辞任。新たに7代目高橋耕三社長が就任。[14]就任1年目の2014年目は企業年金積立の不足額1200億円の負債計上を迫られたものの、2020年の東京オリンピック決定のタイミングで公募増資により、1400億円の資金を得て解消。

その後は太陽光発電の固定費買買い取り制度によるパネル需要の増大と、看板商品である高性能パネル「IGZO」が売れ、亀山工場の生産稼働率が軌道に乗り、2013年度最終純利益は115億円の黒字となった。状況が芳しかったのはこの年まで。

次年度からまたシャープは経営危機寸前まで業績が悪化する。理由としては液晶、太陽光共に需要の変動が大きいことであり、リストラや売却のタイミングが遅れたことである。結果として、2014年度最終純利益はまたしても赤字となり、△2,236億円。2015年度最終純利益もディスプレイ事業の赤字などにより、結果△2,559億円となっている。

2016年から現在

[15]経営再建中のシャープは2016年8月16日、台湾鴻海グループによる総額3,888億円の出資が完了した。これにより、日本の大手メーカーとして初めて外資傘下に入った。また、同日付で高橋耕三社長が辞任し、新たに戴 正 呉副総裁が新社長に就任。

[16]2016年度決算では前期2015年度営業益が△1,619億円からわずか1年足らずで営業益を624億円と黒字化(純利益は△248億円)した。これは経費削減によるコストダウンと構造改革と人員適正化効果によるものである。

[17]2017年度決算ではリーマンショック前の2007年以来初となる全セグメントで営業利益が黒字化し、営業利益901億円、純利益702億円となった。

まとめ

一連のシャープの歴史をすべて調べてみました。正直何時間かかったか分かりませんが、いい勉強になりました。日系電機メーカーは1980年代に大きく躍進しましたが、2000年代から韓国台湾中国メーカーに新興国であったために人件費が安くさらには技術流出もあり、大きく競争力を失っていきました。これはシャープに限らず日立製作所ソニーパナソニックも同様です。

さらにさかのぼると、1980年代はGE(ゼネラルエレクトリック)も家電業界を風靡しておりましたが、日系メーカーの躍進により、B2CからB2Bへと経営転換しています。

何が言いたいかといいますと、決して日系メーカーだけが利害を被っているわけではなく、日本も同様に海外メーカーに競争力で勝ってきた歴史があります。

今後も他の新興国が同様に安くていい商品の販売も始まってくると思います。是非とも就活生の皆さんには大手だから大丈夫。終身雇用は守られるとは思わないで欲しいですし、いい加減日系企業も変わってほしいと切に祈っています。

参考文献

[1] シャープ新社長、「日本通」は表の顔:日経ビジネス電子版

[2]https://corporate.jp.sharp/corporate/ir/library/financial/pdf/2019/1/1903_4q_tanshin.pdf

[3]https://corporate.jp.sharp/corporate/ir/library/financial/pdf/2019/1/1903_4pre_nt.pdf

[4] アニュアルレポート|IR資料室|投資家情報:シャープ

[5] https://corporate.jp.sharp/corporate/ir/library/securities/pdf/125_3q.pdf

[6] シャープの成功と失敗の歴史。どこで間違ってしまったのか?。 - NAVER まとめ

[7] https://www.rieti.go.jp/jp/publications/dp/07j017.pdf

[8] 特別レポート責任をとって辞めたらどう?シャープをダメにした「三悪人」相談役 町田勝彦会長 片山幹雄 社長 奥田隆司(現代ビジネス編集部) | 現代ビジネス | 講談社(1/4)

[9] https://www.hosei.ac.jp/fujimi/riim/img/img_res/200803nakata.pdf

[10] シャープが振り返る「日の丸ディスプレイ」が敗北した理由(前編) | NewsInsight

[11] シャープの経営危機まとめ(チャートと年表)

[12] シャープ、鴻海グループと戦略的提携--鴻海が670億円出資 - CNET Japan

[13] 【ビジネスの裏側】“暴走”会長が“無能”社長と差し違い シャープ電撃交代の真相(1/3ページ) - 産経WEST

[14] 【ビジネスの裏側】シャープ去るサラリーマン社長、高橋興三氏の苦渋3年「こんなにしんどいとは思わなかった」(1/6ページ) - 産経WEST

[15] 鴻海、シャープへ3888億円の出資完了 国内電機大手が外資傘下へ 高橋興三社長は経営責任とり退任(1/2ページ) - 産経WEST

[16]決算短信2016年度 https://corporate.jp.sharp/corporate/ir/library/financial/pdf/2017/1/1703_4pre.pdf

[17]決算短信2017年度 https://corporate.jp.sharp/corporate/ir/library/financial/pdf/2018/1/1803_4pre.pdf

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