てっちゃんdaily

都内国立大学院理系1年生。留学体験や就職活動に向けた企業研究、株式投資など投稿していきます。

日立製作所の企業研究(2019年3月期)

日立製作所の企業研究です。企業の理解を深めるために一連の情報をHPリンクとともにまとめてあります。この記事では投資家向け資料の連結決算概要から各セグメントの情報や考察を行いました。

どちらかというと技術系の学生向けになっていると思いますが、事務系の学生にも役に立つ情報をまとめてあると思います。

では、よろしくお願いします。

 

 

 

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日立ロゴ(HPより)

 

 

代表取締役

氏名

東原俊昭

経歴:

[1]国立阿南工業高等専門学校

徳島大学工学部電気工学科卒業(1977年)

新卒にて日立製作所入社

日立パワー・ヨーロッパ社プレジデント

株式会社日立プラントテクノロジー代表執行役 執行役社長

2016年から代表執行役 執行役社長兼CEO兼取締役

 

代表メッセージ

[2]人々の豊かな暮らしを実現する社会イノベーション

マネージメントメッセージ

 

 

企業理念

 

[3]創業者 小平浪平が抱き、創業以来大切に受け継いできた企業理念、”優れた自主技術、製品の開発を通じて社会に貢献する
その実現に向けて先人たちが苦労を積み重ねる中で形づくられた日立創業の精神
そしてそれらを踏まえ、日立グループの次なる成長に向けて、あるべき姿を示した日立グループ・ビジョン
これらを、日立グループMISSION、VALUES、VISIONとして体系化したものが、
日立グループアイデンティティです。

上記は企業理念の一部に過ぎないので、HPにて日立グループアイデンティティについて記載されています。

会社概要は[4]参照。

アイデンティティや事業内容など基本情報が記載されています。

 

設立年・資本金・株式公開・事業拠点

設立年

[5]大正9年(1920年)2月1日 [創業 明治43年(1910年)]

(補足)設立と創業の違い

設立は事業などに関係なく会社法人を設立した年になる。

創業は営利を目的とした事業を始めることです。

つまり、個人事業主として商売を始めた年が創業年。会社法人を立ち上げた年を設立年となる。

資本金

 458,790百万円(2018年9月末現在)

株式公開

966,692,677株(2018年10月1日より)

事業拠点

[6]国内事業拠点はHPにありますが、多くの企業同様にどの部署がどこに入っているかはわかりませんでした。

 

 

詳しい事業内容

情報・通信システム

システムインテグレーション、コンサルティングクラウドサービス、サーバ、ストレージ、ソフトウェア、通信ネットワーク、ATM

 

社会・産業システム

製造業・流通業向けシステム、水処理システム、産業用機器、エレベーター、エスカレーター、鉄道システム、原子力発電システム、再生可能エネルギー発電システム、送変電システム

 

電子装置・システム

半導体製造装置、計測・分析装置、先端産業部品、医療機器

 

建設機器

油圧ショベルホイールローダー、マイニング機械

 

高機能材料

半導体・ディスプレイ用材料、配線板・関連材料、自動車部品、蓄電デバイス、特殊鋼製品、磁性材料、素形材部品、電線材料

 

オートモティブシステム

エンジンマネジメントシステム、エレクトリックパワートレインシステム、走行制御システム、車載情報システム

 

生活・エコシステム

冷蔵庫、洗濯機、掃除機、ルームエアコン、業務用空調機器

 

*金融サービスについては持ち分会社であった日立キャピタルを持ち分法適用会社としたことに伴い除外

 

業績

2017年度(2018年3月期)

売上高

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調整後営業利益と利益率

 

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重電系メーカー売上国内トップ企業である。売上に関してはほぼ横ばいであるが、利益率が右肩上がり。

 

2013年以前の色を変えている理由は、会計方式の違いによる問題である。以前まで米国会計基準を使用していたが、2014年からIFRSに変更されている。

 

会計士でもないでの深くはわからないが、売上の違いとしては製品を出荷した段階で売上に計上されるのか製品を納品した後に売上に計上されるのかの違いがある。

 

したがって、色だけ変えておいた。

 

以降セグメント情報に移行するが、会計方式の違いやセグメントの変更などがあるため、IFRS方式になった2014年から

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情報・通信システム

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社会・産業システム

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電子装置システム

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建設機械

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高機能材料

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オートモティブシステム

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生活・エコシステム

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その他(物流・サービス他)

 

営業業績の分析

[7]当期における日立グループの売上収益は、前期に比べ1%増の9兆4,806億円となりました。日立国際電気の売却による減収があったものの、北米やアジア・大洋州を中心に売上が拡大した建設機械部門、欧州向け鉄道システムが好調であった社会・産業システム部門、システムインテグレーションが堅調に推移した情報・通信システム部門、日立化成および日立金属における事業買収により高機能材料部門が増収となりました。

 

 

調整後営業利益は、オートモティブシステム部門や高機能材料部門等が減益となったものの、社会・産業システム部門、建設機械部門、情報・通信システム部門が増収および収益性改善により増益となったことにより、前期に比べ403億円増加し、7,549億円となりました。

 

 

EBITは、調整後営業利益の増加および日立国際電気株式の売却益の計上に加え、オートモティブシステム部門におけるクラリオン株式等の売却益や、社会・産業システム部門において、鉄道システム事業におけるアジリティ・トレインズ・ウエスト社の一部株式の売却益計上があったものの、電力・エネルギー事業における英国原子力発電所建設プロジェクトの凍結に伴う減損損失の計上等により、前期に比べ1,303億円減少し、5,139億円となりました。

 

調整後営業利益とEBITの違い

まず、日立製作所では”調整後営業利益”と”EBIT(Earnings Before Interest and Taxes)”の2つの指標が連結決算資料にある。調整後営業利益は経営の実態をより適切に表示するために売り上げ収益から売上原価、販売日および一般管理費の額を減算して算出した指標。

EBITは、営業利益から、受取利息の額を減算し、支払い利息の額を加算して、特別損益を調整した結果になります。

単純に企業の営業利益(本業によってもたらされる利益)を考慮すれば十分だと思われる。なぜなら、特別損益は株式売却益などの本業以外の損益が加味されるため、企業本来の力を反映した数値とは異なるため。

向先地域別売上高

ここでは、顧客の所在地別で売上高を考察する。

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地域別向先売上

上記より、国内外の売り上げ割合がおおよそ50:50であることが分かる。また、連結売上高のうち北米が13 %、欧州が11 %、アジアが21 %を占めていることが分かる。

 

成長性

ここで考慮する成長性としては、2点あげる。1つは経済的動向、もう1つが研究力とする。

経済的動向

2018年3月期の経済的動向

[8]今後の当社を取り巻く経営環境は、米国を中心に世界経済全体として緩やかな景気拡大基調が持続すると見込まれる一方、英国のEU離脱交渉や世界各国の通商関係の動向など、不透明な経済状況が続く見通しです

2019年3月期の経済的動向

[7]当社は、お客様との協創を通じた社会イノベーション事業のグローバル展開を加速するとともに、継続的な事業構造改革の実施や事業ポートフォリオの見直しなど経営基盤強化に向けた取り組みを推進し、持続的な成長をめざしていきます。

2019年3月期の経済的動向にはあまり多くの情報は乗っていなかった。2019年に入り、世界経済の不覚的要素が増えたために、言及を避けたのでしょうか?

研究比割合

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設備投資額・減価償却費・研究開発費[11]

[11]よりそのまま引用しました。

研究費割合で言うと少ない方です。

 

個人的考察

企業考察

成長性の前に企業考察をしてみる。まず、日立製作所の特徴として意思決定速度の速さが挙げられる。100%子会社(完全子会社)として分社化することによる意思疎通の迅速化。100%子会社(完全子会社)とは子会社の発行株式をすべて親会社が所有している状態。分社化することで独立した経営となるため子会社内の意思疎通が迅速となる。また、上場しているグループ会社の利益を本社に取り込むメリットもある。つまり、上場グループ会社の場合、本社以外の株主に対しても利益は流出することとなるが、それを抑えることができる。

 

 

次にあげられるのが、選択と集中。これはリーマンショック日立製作所が2009年3月に8,000億の赤字を計上した際に”総合電機メーカー”の日立製作所から採算の合わない事業について撤退を行い、主力事業に注力した。結局この決断が業績のV字回復となり、現在に至る。

 

 

最近の題材としては英国の原発事業の撤退が挙げられる。これはインフラに強みのある日立製作所にとって大きなビジネスであった。経済規模は3兆円。2012年に日立製作所が英ホライズン社を買収し原子炉2基を有した原子力発電所の建設を進めてきた。しかし、2019年1月17日に事業の凍結がきまった。

 

 

個人的には非常に肯定的な意見を持っている。福島原発の事故から世界世論の脱原発再生可能エネルギーの注目(特に欧州)は大きく、仮に原発が英国内で稼働したとしても事故が再び起こるようなことが起きたらどうなっていたか・・・3000億円の特別損失が計上されたが、最小限に食い止めた。と思っている。

 

 

成長性について

成長性があるとは言えないかと考えている。売り上げ規模が10兆円規模の国内最大級の会社の利益が1割増えるとすると1兆円・・・この数字が簡単か簡単ではないかと言ったら・・・ということですね。ただ、日立の強みは事業の広さにあり、不採算の事業の1つや2つ出たところでほかの事業でカバーできる。大企業の安定性といった面では非常に高いと考える。

 

 

今後の伸びしろとしては2018年度中期系戦略にある時代に伴ったM&Aによる事業の拡大。もう1つ日立製作所が注力しているのがLumadaによるディジタル事業拡大の2つである。Lumadaに関しては参考文献[10]参照。

 

 電気主要8社比較

 

www.tecchan.tokyo

 

 三菱電機企業研究

 

www.tecchan.tokyo

 

 

参考文献

[1]東原 敏昭 略歴:日立

[2]マネジメントメッセージ:サステナビリティ:日立

[3]日立グループ・アイデンティティ:日立

[4]http://www.hitachi.co.jp/about/corporate/jp_Outline_2018-2019.pdf

[5]株式情報:株主・投資家向け情報:日立

[6]国内所在地一覧:日立

[7]https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2019/04/0426/2018_An.pdf

[8]https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2018/04/0427/2017_An.pdf

[9]https://www.hitachi.co.jp/IR/library/integrated/2018/ar2018j.pdf

[10]2018年度には売上高1兆円超え、日立が考えるIoT基盤の3つの成長パターン (1/2) - MONOist(モノイスト)

[11]設備投資額・減価償却費・研究開発費 他:株主・投資家向け情報:日立