NEC(日本電気株式会社)の企業研究2018年度
日本電気株式会社の企業研究です。企業の理解を深めるために一連の情報をHPリンクとともにまとめてあります。この記事では投資家向け資料の連結決算概要から各セグメントの情報や考察を行いました。どちらかというと技術系の学生向けになっていると思いますが、事務系の学生にも役立つ情報をまとめてあると思います。
では、よろしくお願いします。
代表取締役
氏名
新野 隆
経歴
代表取締役 執行役員社長 兼 CEO 新野 隆のプロフィール: 役員 | NECより引用
1977年 京都大学工学部卒業
1977年4月 当社入社
2004年4月 第二ソリューション営業事業本部長
2005年4月 第三ソリューション事業本部副事業本部長
2006年4月 金融ソリューション事業本部長
2008年4月 執行役員 兼 金融ソリューション事業本部長
2008年8月 執行役員
2010年4月 執行役員常務
2011年6月 取締役 執行役員常務
2011年7月 取締役 執行役員常務 兼 CSO(チーフストラテジーオフィサー)
2012年4月 代表取締役 執行役員副社長 兼 CSO(チーフストラテジーオフィサー) 兼 CIO(チーフインフォメーションオフィサー)
2016年4月 代表取締役 執行役員社長 兼 CEO (チーフエグゼクティブオフィサー)、現在に至る。
代表メッセージ
トップメッセージ: 会社概要 | NEC より引用
“NECグループは、1899年の創業時から「ベタープロダクツ・ベターサービス」をモットーに、高い倫理観を持って、お客さまにとって価値ある商品やサービスを創造し、お客さまをはじめとする全てのステークホルダーから信頼され、選ばれる企業となり続けることを目指してきました。
現在、NECグループは、情報通信技術を用いて、社会に不可欠なインフラシステム・サービスを高度化する「社会ソリューション事業」に注力しています。この事業活動を通じ、人が豊かに生きるための「安全」、「安心」、「効率」そして「公平」という価値に基づく、「人と地球にやさしい情報社会」を全てのステークホルダーと協奏し作り上げていきます。
NECグループひとりひとりが自助の精神を持って、社会やお客さまの期待を率先して汲み取り、考え、行動し、価値を提供し続ける企業文化を定着させることを目指し、全てのステークホルダーとの信頼関係をより強固なものにしていきます。どうぞご期待ください。”
企業理念
“「NEC Way」は、企業理念、ビジョン、ブランドステートメント、バリュー、企業行動憲章などを含む、NECグループの経営活動の仕組みを体系化したものです。私たちはNEC Wayの実践を通して社会価値を創造していきます。”
設立年・資本金・株式公開・事業拠点
創立年
1899年(明治32年)7月17日
資本金
3,972億円 (2018年3月末現在)
株式公開
260,473,263株
事業拠点
事業所
玉川事業所:通信機器生産および研究開発
府中事業所:コンピューターおよび通信機器生産
相模原事業所:研究開発
我孫子事業所:通信機器生産
研究所
中央研究所(玉川事業所)
筑波研究所
相模原研究所
すべての事業所及び研究所は首都圏内に固まっている。
事業内容と事業所については明記されている資料がないので、細かいことまでは不明。
詳しい事業内容
[1]より引用。
パブリック事業
“国内外の政府、官公庁、自治体、公共機関、医療機関などのお客さまに向けて、ネットワーク技術やセンサー技術など、NECがもつICTやさまざまな技術を融合した社会ソリューションを提供。業務の効率化や公共サービスの質の向上に寄与しています。また、山や河川、ダムや大型プラントに高精度のセンサーや監視システムを設置して、そこから得られた情報をビッグデータ分析技術で分析。災害や事故を未然に防ぎ、災害発生時の被害抑制を目指す防災ソリューションを提供しています。さらに、世界No.1の生体認証技術を用いたソリューションから、人工衛星の開発まで、社会を支える事業を幅広く展開しています。”
主なソリューション例
公共
消防指令システム、消防デジタル無線、防災システム、交通管制システム、鉄道ネットワークシステム、地方公共団体向けシステム
医療
電子カルテシステム、地域医療連携ネットワーク
地域産業:基幹業務システム
官公
税・社会保障システム、指紋認証システム、航空管制システム、衛星通信、地球観測、野外通信システム、学校教育システム、郵便追跡システム、施設監視・エネルギー管理
メディア
テレビ番組制作・報道・送出システム、デジタルテレビ送信機
エンタープライズ事業
“製造業、流通・サービス業、金融機関を中心とする民間企業向けにITソリューションを提供し、新サービス立ち上げなど、お客さまにとっての新たな価値創造に貢献します。特に製造・物流・流通とつながるサプライチェーン・マネジメント事業については、今後の成長領域として国内外での展開を加速していきます。例えば、小売業のお客さまに対し、在庫管理や発注作業を一括管理できるデータベースやシステムなど、トータルなソリューションサービスを提供しています。これにより、消費者のニーズに合わせたスピーディな品ぞろえ対応を実現し、お客さまの売上拡大に加え、在庫管理の最適化など、経営の効率化に貢献しています。”
主なソリューション例
製造
グローバルSCMシステム、設計管理システム、生産管理システム、販売管理システム
流通
小売り本部・店舗システム、物流システム
金融
銀行勘定系システム、営業店システム、保険・証券基幹系システム、保険・証券チャネルシステム
ネットワークサービス事業
“通信事業者向けにネットワークを構築するために必要な機器や、ネットワーク制御のための基盤システム、運用サービスなどを提供しています。これまでに培った大規模ネットワーク構築をはじめとする豊富な実績と高い技術力を強みとして、信頼性の高い通信基盤の実現に貢献します。例えば、陸上の通信ネットワークの構築に加え、海底ケーブル事業を通して国境・大陸を超えた通信を実現させてきました。また、新興国では通信インフラの構築と運用支援を行い、電話やインターネットの通信環境を大幅に改善しました。NECのテレコムキャリア事業は世界をつなぎ、いつでもどこでも誰とでもつながる通信環境の構築に貢献しています。”
主なソリューション例
ネットワークインフラ
コアネットワーク、携帯電話基地局、光伝送システム、ルータ/スイッチ
システム・インテグレーション
システム構築、コンサルティング
サービス&マネージメント
OSS(Operation Support System)、BSS(Business Support System)
システムプラットフォーム事業
“端末からネットワーク機器、コンピューター機器、ソフトウェア製品、サービス基盤まで、ビジネス向け製品と、これらをベースにしたソリューションサービスを一括提供しています。これらの製品群とソリューションサービスを融合したプラットフォームにより、お客さまの経営課題であるコスト削減や事業拡大に取り組みます。NECは、お客さまの業務の省力化・効率化を実現するとともに、ICTを活用した新たな価値を創出しています。例えば、科学技術計算や大規模データの高速処理を得意とし、気象予報、地球環境変動解析、流体解析などを行う世界トップクラスのスーパーコンピューターを開発し、国内外のお客さまに提供しています。また、クラウドビジネスの進展にともない、全国にデーターセンターを展開しており、最適かつ安定的なシステム構築・運用サービスの提供を通して、お客さまのビジネスに大きく貢献しています。”
主なソリューション例
ハードウェア
サーバ、メインフレーム、スーパーコンピュータ、ストレージ、企業向けパソコン、POS、ATM、制御機器、無線LANルータ
ソフトウェア
総合運用管理、アプリケーションサーバ、セキュリティ、データベース
企業ネットワーク
IPテレフォニーシステム、WAN/無線アクセス装置、LAN製品
保守サービス
グローバル事業
“2018年4月、NECのグローバル成長を加速するため、海外市場を対象とする事業部門が集まり、新たな組織として発足しました。グローバル選任体制として経営スピードを向上し、現地法人との連携も一層強化することで、社会課題の解決を実現するソリューションを提擁提供していきます。”
主なソリューション例
セーフティ
生体認証ソリューション(顔認証、指紋認証など)、サーベイランス
サービスプロバイダ向けソフトウェア
サービス(OSS/BSS、SDN(Software-Defined Networking)/NFV(Network Function Virtualization))
ネットワークインフラ
海洋システム(海底ケーブル、海洋観測システム)、モバイルバックホール
システムデバイス
ディスプレイ、プロジェクタ
大型蓄電システム
業績
2017年度(2018年3月期)
売上高
(単位:百万円) | ||||
---|---|---|---|---|
売上高(2017年度) | 売上高(2018年度) | 構成比(%) | 前年比(%) | |
連結売上高 | 2,844,447 | 2,913,446 | - | 102.4 |
セグメント別 | - | - | - | - |
パブリック | 933,100 | 949,600 | 32.6 | 101.8 |
エンタープライズ | 408,700 | 435,000 | 14.9 | 106.4 |
ネットワークサービス | 377,600 | 394,800 | 13.6 | 104.6 |
システムプラットフォーム | 531,700 | 546,700 | 18.8 | 102.8 |
グローバル | 453,700 | 440,700 | 15.1 | 97.1 |
その他 | 139,700 | 146,600 | 5.0 | 104.9 |
営業利益率
(単位:百万円) | ||||
---|---|---|---|---|
営業利益(2017年度) | 営業利益(2018年度) | 利益率(%) | 前年比(%) | |
営業利益 | 90,125 | 84,140 | 2.9 | 93.4 |
セグメント別 | - | - | - | - |
パブリック | 53,200 | 52,200 | 5.5 | 98.1 |
エンタープライズ | 35,700 | 35,100 | 8.1 | 98.3 |
ネットワークサービス | 17,300 | 13,100 | 3.3 | 75.7 |
システムプラットフォーム | 30,000 | 22,300 | 4.1 | 74.3 |
グローバル | △ 28,000 | △ 29,400 | △ 5.4 | - |
その他 | △ 400 | 20,900 | - | - |
調整額 | △ 43,800 | △ 55,700 | - | - |
営業業績の分析
[2]2019年3月期決算短信引用
“2018年度の世界経済は、米国が堅調に推移したものの、中国や欧州等が減速したことなどにより、全体では、前期に比べて成長率が鈍化しました。
日本経済も、設備・雇用不足等を背景に設備投資が堅調だったものの、相次ぐ自然災害や、海外景気減速などの影響により、前期に比べて成長率が鈍化しました。”
向先地域別売上高
向先地域別売上高は国内76 %、北米および南米6 %、EMEA5.5 % 、アジアパシフィック12 %となっている。
成長性
経済的動向
2019年度決算短信引用
“2019年度の売り上げ収益は、電極事業や照明事業の比連結化に伴う減収があるものの、ケーエムディ・ホールディング社の連結化などによるグローバル事業の拡大により、2兆9500億円を計画しています。営業損益は、2018年度に実施した「収益構造の改革」による固定費削減や、事業構造改善費用などの一過性費用の減少を見込み、1,100億円の利益を計画しています。親会社の所有者に帰属する当期損益については、650億円の利益を計画しています。”
同様に2019年3月期決算短信に基づいた要約。
“「2020中期経営計画」に基づき、「収益構造の改革」「成長の実現」「実行力の改革」に取り組む。
「収益構造の改革」
成長軌道への回帰に必要な投資を実現するために固定費の削減を含む抜本的な収益の改革に踏み切りました。具体的には、間接部門及びハードウェア事業領域の国内の人員を対象とした特別転進支援施策を行ったほか、NECグループ外企業への出向・転籍の推進や、照明事業の譲渡などにより、合わせて約3000人の人員削減を実施しました。これに加えて、不動産費用などの効率化を進めたほか、筑波研究所の稼働停止や、NECプラットフォームズ(株)の生産拠点再編などにより、人件費や経費の削減を推進し、2019年度の収益改善につながる取り組みを進めました。
「成長の実現」
まず、生体認証技術とAI技術を生かした事業推進に取り組みました。国際的なスポーツイベントや成田空港の新しい搭乗手続き「OneID」など、様々なシーンで顔認証システムが採用されています。AI技術の活用事例としては、デジタルホスピタルの実現に向けて患者の様態変化の予兆検知などの検証を医療方針団体KNIとおこなったほか、社会課題である食品ロス・廃棄の解決に向けてバリューチェーン全体の需要バランスの最適化をはかる「需要最適化プラットフォーム」の提供を開始しました。
また、パブリックセーフティ、デジタルガバメントなどの領域についても事業拡大に取り組みました。そこで、2019年2月にデンマーク最大手のIT企業であるケーエムディ社の持ち分ケーエムディ・ホールディングス社を買収し、デジタルガバメント領域におけるプラットフォームを活用したビジネスモデルを獲得しました。今後は、当社が2018年1月に買収した英国ノースゲート・パブリック・サービシズ社、ケーエムディ社とNECグループ間のシナジーを創出し、北欧から欧州全域、世界への展開を目指します。
「実行力の改革」
事業開発力の強化と、やり抜く組織の実現に取り組みました。まず、事業開発力の強化については、外部資金などを活用して、新技術を早期に事業化するために、ドットデータ社を米国に設立し、競争力のある技術の収益化を図りました。また、コア技術のグローバルな事業化を加速するインキュベーションを担うNECエックス社を米国に設立しました。次に、やり抜く組織の実現については、抜本的な企業文化の変革を担う専門組織としてカルチャー変革本部を新設し、企業文化の変革に抜けた全社プロジェクトを立ち上げました。”
研究比割合
設備投資・研究開発費・減価償却費: 財務・業績情報 | NECより引用
研究開発費は以下の通りである。
2017年度で108,093百万円(売上比3.8 %)
2018年度で114,000百万円(売上比4.0 %)
個人的考察
成長性について
国内向けについて
国内向けについてはインフラ向けのシステムが多いことから、安定した業績を今後も出していくことが考えられる。基本的に官公庁や公共団体などのシステムについては大きくシステムを変えることがないと考えられるので、安定した受注は望めると考えている。その一方で、財務状況からわかる通り、国内収益の増益に関しては多くは見込めないだろう。
海外向けについて
海外向けに関しては決算短信に示されているように拡大の見込みは十分にあると考えている。ただし、海外事業はようやくスタートしたところであるので、まだ不明瞭な部分が多い。収益に直結すればよいのだが。
[4]「2020中期経営計画」を見た限り、不採算事業の撤退と成長事業へのシフトを行っていくことが書かれていたため、それなりの成長が見込めるのであろう。2020年には海外売り上げ収益が2017年度比に比べて6.8 %の成長予想となっており、グローバル化がようやく始まっている。
時事問題
少し過去のNECの歴史について調べてみた。まず、NECは今世紀に入ってから売上高は2000年度の5兆4097億円を頂点に低下の一途を辿っている。営業利益も1851億円から2016年度には1/3の500億円を下回った。それからは事業の縮小一択で、2010年に携帯電話・半導体事業、2011年にはパソコン、2014年にはインターネットプロパイダ事業を縮小。2017~2020年の間に車載電池・小型蓄電池事業の切り離しが予定されており、売り上げはその他に包含され、成長戦略からは外れている。
リストラも相次いでいる。2018年の3000人のリストラで4度目である。2001年に4000人、2002年に2000人、2012年に10000人の削減に次いでいる。すこし信じられない経営手段について書かれていたのだが、2012年の10000人のリストラの際にハードウェアの技術者をソフトウェアの部署に配置転換して乗り切ろうとしたらしい。私もハードウェアを選考する学生だが、とても正気の沙汰とは思えない。経営陣は技術者のことなど何もわからないものなのだろうか?
技術系の学生でも経営陣の出所を見ておくのも大事なのかもしれない。
参考文献
[2] https://jpn.nec.com/press/201904/images/2601-01-01.pdf
[3] https://jpn.nec.com/ir/pdf/annual/2018/ar2018-j.pdf
[4]https://jpn.nec.com/ir/pdf/library/180130/180130_03.pdf
[5]NEC、事業縮小続き人員削減「4度目」の必然 | IT・電機・半導体・部品 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準