京セラ株式会社の企業研究
京セラ株式会社の企業研究です。企業の理解を深めるために一連の情報をHPリンクとともにまとめてあります。この記事では投資家向け資料の連結決算概要から各セグメントの情報や考察を行いました。どちらかというと技術系の学生向けになっていると思いますが、事務系の学生にも役立つ情報をまとめてあると思います。
では、よろしくお願いします。
代表取締役
氏名
山口吾郎(代表取締役会長)
谷本秀夫(代表取締役社長)
代表メッセージ
[1]お客様の満足のために、グループの力を結集し、新たな価値を創造し続ける。
企業理念
社是
[2]“敬天愛人”常に公明正大 謙虚な心で 仕事にあたり 天を敬い 人を愛し 仕事を愛し 会社を愛し 国を愛する心
経営理念
全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、
人類、社会の進歩発展に貢献すること。
設立年・資本金・株式公開・事業拠点
設立年
1959年4月1日
資本金
115,703百万円 (2019年3月期)
株式公開
377,618,580株
事業拠点
事業所、営業所は [3]参照。
研究所については[4]参照。
詳しい事業内容
[5]事業内容は8つのセグメントから構成されている。
産業・自動車用部品
ファインセラミック部品と自動車部品やその他工作機器の開発製造を行っている事業。
半導体関連部品
電子機器や、車載向けのセラミックパッケージや通信モジュール、配線基板などの開発製造を行っている事業。
電子デバイス
電子部品の開発製造を行っている事業。
コミュニケーション
携帯端末やタブレット、國愛通信サービスの提供を行っている事業。
ドキュメントソリューション
プリンターや複合機、それに関連したサービスの提供を行っている事業。
生活・環境
ソーラーエネルギー関連や医療用製品の開発製造を行っている事業。
その他
宝飾品やセラミックキッチングッズからリゾートホテルの運営までの提供を行っている事業。
各セグメントの詳細や商品はHPを参照してください。このサイトよりよっぽど詳しく書いてあります。
業績
2017年度(2018年3月期)
売上高
営業利益率
産業・自動車部品
[6]前連結会計年度に実施したM&Aにより機械工具の売上が増加 したことに加え、産業機械向けファインセラミック部品の売上が堅調に推移しました。
半導体関連部品
[6]スマートフォン及び光通信用セラミックパッケージの売上が 減少しました。 事業利益はセラミックパッケージの減収や有機材料事業において減損損失161億84百万円を計上したことにより、前連結会計年度の310億49百万円に比べ201億17百万円(64.8%)減少の109億32百万円 となり、事業利益率は前連結会計年度の12.1%から4.4%へ低下しました。
電子デバイス
[6]前連結会計年度にAVXが実施したM&Aによる貢献に加 え、スマートフォン向けセラミックコンデンサの売上が増加しました。 事業利益は増収及びAVXの収益性向上により、前連結会計年度の466億32百万円に比べ202億94百万 円(43.5%)増加の669億26百万円となり、事業利益率は前連結会計年度の15.3%から18.3%へ上昇し ました。
コミュニケーション
[6]情報通信サービス事業はエンジニアリング事業を中心に増収 となったものの、通信機器事業は主に国内向け端末の販売台数の減少により、減収となりました。 一方、事業利益は、通信機器事業において低採算製品の縮小及び原価低減による収益性改善が進 んだことから、前連結会計年度の44億40百万円に比べ59億53百万円(134.1%)増加の103億93百万円 となり、事業利益率も前連結会計年度の1.7%から4.1%へ上昇しました。
ドキュメントソリューション
[6]当連結会計年度の売上高は、為替変動の影響はあったものの、複合機等の販売台数が堅調に推移 したことに加え、M&Aの貢献もあり、前連結会計年度の3,710億58百万円と比較し、40億89百万円 (1.1%)増加の3,751億47百万円となりました。事業利益は、増収に加え、コスト低減や生産性向上により、前連結会計年度の408億51百万円に比べ26億77百万円(6.6%)増加の435億28百万円となり、事業利益率は前連結会計年度の11.0%から 11.6%へ上昇しました。
生活・環境
[6]当連結会計年度の売上高は、主にソーラーエネルギー事業の売上が減少したことにより、前連結 会計年度の1,122億12百万円と比較し、320億98百万円(28.6%)減少の801億14百万円となりました。 ソーラーエネルギー事業において、生産拠点の集約等、原価低減に取り組んだものの、減収及びポリシリコン原材料に関する長期購入契約の和解費用等523億13百万円を計上したことにより、事業 損失は前連結会計年度の554億92百万円に比べ115億24百万円拡大し、670億16百万円となりました。
営業業績の分析
[6]当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ466億71百万円(3.0%)増加の1兆6,237億10 百万円となり、2期連続で過去最高を更新しました。ソーラーエネルギー事業の受注減により「生活・環境」の売上は減少したものの、前連結会計年度に実施したM&Aの貢献もあり、「電子デバイス」や「産業・自動車用部品」の売上が増加しました。利益は、ソーラーエネルギー事業においてポリシリコン原材料に関する長期購入契約の和解費用 等523億13百万円、有機材料事業において有形固定資産及びのれん等の減損損失161億84百万円をそれぞれ計上しましたが、増収及び各部門での原価低減効果により、前連結会計年度に比べ増加しました。これにより、営業利益は41億24百万円(4.5%)増加の948億23百万円、税引前利益は同106 億18百万円(8.2%)増加の1,406億10百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は、税金費用の 減少もあり、同240億73百万円(30.4%)増加の1,032億10百万円となりました。税金費用の減少の主な要因は、前連結会計年度は米国税制改正等に伴い、AVX Corporation(以下「AVX」)をはじめとする米国子会社にて一時的な税金費用を計上した一方で、当連結会計年度は京セラディスプレイ ㈱の吸収合併に伴い、同社の繰越欠損金等に係る繰延税金資産を認識したことによるものです。
向先地域別売上高
向先地域別売上は村田製作所などの部品メーカーと比較してバランスよく構成されている。
ある分野に特化して売り上げを上げているわけではなく、どちらかというと総合電機メーカーに似た構成比になっている。
成長性
経済的動向
[6]翌連結会計年度(2019年4月1日から2020年3月31日まで)は、部品事業においては、スマートフォン市場での伸び悩みが予想される一方、5Gの商用開始に向けた基地局等、通信インフラ市場の 立ち上りが見込まれます。また、自動車関連市場では、引き続きADAS関連が需要の伸びをけん引 するものと予想しています。ドキュメントソリューション事業においては、M&Aの効果を追求し、 機器及びソリューション事業の更なる拡大を図ります。これらの事業の伸びにより、当社は3期連 続で過去最高売上高の更新を目指します。 また、翌連結会計年度は、積極的な設備投資に伴う減価償却費の増加や、新規事業創出及び新 市場開拓に伴う費用増に加え、創立60周年行事に関する費用の計上を予定しています。事業成長 に向けた費用が増加するものの、当連結会計年度までに構造改革を実施したソーラーエネルギー事業及び有機材料事業における採算改善を図るとともに、全社で取り組んでいるAI等を活用した 生産性倍増プロジェクトを加速させます。
研究費割合
当期と来季予測の設備投資費及び研究開発費です。設備投資が比較的高いのに対して研究開発費は若干低め。
個人的考察
成長性について
まず、市場の変化については村田製作所の資料にて詳しく書いたので、そちらをご覧ください。
日系電子メーカーの将来性は総合電機メーカーと比較して明るいのではないかと考えている。
成長部門
中長期計画の2021年売上高2兆円、税引前利益率15%の達成のため、以下の3点に重点を置かれている。
事業拡大に向けた積極投資の継続
最新の買収では、[7]の建築産業用工具の大手販売会社サザンカールソン社の買収が新しい。傾向として、注力分野での買収と合併に積極的であり、海外売上比を伸ばしている。
個人的にはプリンターや複合機など今後の需要に不明瞭な分野の買収も含まれているが、[8]中長期的に見たら不利な条件でも買収に乗り切るのが京セラのやり方のようだ。
プリンター複合機の将来性についてキヤノンの記事にて考察しています(オフィスビジネスユニットについて)。
生産性倍増プロジェクトの推進
多くの企業がシフトしている通り、工場の自動化が進んでいる。人員の削減と生産性の向上を目的としたFA関連の投資を進めていく。
ソーラーエネルギー事業の事業モデルの転換
ソーラーエネルギー事業は京セラの足を引っ張っている。特に問題となっているのが、電気の販売価格であろう。[9]現状は固定価格制度といい電気の買取価格を10年間固定する仕組みになっている。これによって初期投資の高い太陽光発電でもリターンがきっちり返ってくるように普及を促していた。
しかし、現状では電気の買取価格はピーク時の半分(24円/kWh)となっている。
普及率に関しても[10]に書かれている通り、まだまだ低い。いまだに普及率は10%以下の水準で推移しており、初期費用に加えてメンテナンスなど長期で見た場合に費用対効果がどの程度あるのか明確でないため、このような結果となっている。
よって、京セラの方針として初期投資を抑えたサービスの運用を進めている。そこでキーとなるのが電気を売るから貯めるにシフトすることである。今後の普及に関しては不明瞭な部分が多いが、再生可能エネルギーの中で現状最も普及しているのが太陽光発電であるのは自明であるし、これからも拡大路線であることに変わりないと思う。
参考文献
[1] https://www.kyocera.co.jp/company/summary/message.html
[2] https://www.kyocera.co.jp/company/philosophy/index.html
[3] https://www.kyocera.co.jp/company/location/type/japan/offices.html
[4] https://www.kyocera.co.jp/company/division/r_and_d.html
[5] https://www.kyocera.co.jp/company/division/index.html
[6] https://www.kyocera.co.jp/ir/library/pdf/FY19_4Q_tanshin.pdf
[7] 京セラ、米工具販売会社を買収 900億円で :日本経済新聞
[8] なぜ、京セラ稲盛和夫氏は「不利な買収条件」でも応じたのか? - まぐまぐニュース!
[9] ついに家庭用太陽光発電が「2019年問題」に直面! 電気が売れない今後の行方は - 家庭用太陽光発電(ソーラーパネル)の価格比較・一括見積もりは「タイナビ」
[10]住宅に太陽光発電を導入した理由、しない理由――消費者の本音は (1/2) - スマートジャパン