ファナック株式会社の企業研究(2019年3月期)
ファナック株式会社の企業研究です。企業の理解を深めるために一連の情報をHPリンクとともにまとめてあります。この記事では投資家向け資料の連結決算概要から各セグメントの情報や考察を行いました。どちらかというと技術系の学生向けになっていると思いますが、事務系の学生にも役立つ情報をまとめてあると思います。
では、よろしくお願いします。
代表取締役
氏名
山口 賢治
経歴
1993年 東京大学大学院工学研究科精密機械工学専攻
1993年 ファナック株式会社入社
2000年 ロボット研究科一部一課長
2003年 MT本部長
2008年 専務取締役
2013年 代表取締役副社長
2016年 代表取締役社長兼CEO
2019年 社長兼最高経営責任者CEO
企業理念
“[1]創業以来のファナックの理念である「厳密と透明」の実践を徹底しています。ガバナンスを現実的に機能させるには、このように分かり易くシンプルな理念をグループ全役員社員で共有することが効果的と考えます。
「厳密と透明」について
厳密:企業の永続性、健全性は厳密から生まれる
透明:組織の腐敗、企業の衰退は不透明から始まる。”
シンボル
欅
風雪に耐えた太い幹から、今また、若い小枝をいっぱいに張り始めている。
しかもそれが明るく輝いている。
これは小柄でもがっしりと逞しいファナックが育ちその太い幹から五年後、十年後に新しい技術が生まれてくるだろうという期待と社員全員が誇りを持って巨人のごとき逞しさがある企業にファナックを育て上げていこうではないかという企業理念を表している。
設立年・資本金・株式公開・事業拠点
設立年
1972年
資本金
690億円
株式公開
204,040,771株
事業拠点
研究所、工場、サービス拠点に分かれます。ただし、研究所の場所については明記されている部分を見つけられなかった。基本的には本社だと思うのだが、もし、何かソースがあればコメント欄にお願いします。
国内サービス拠点 - グローバルサービス - サービスのご案内 - ファナック株式会社
詳しい事業内容
- FA部門
CNC、サーボモータ、サーボアンプ、レーザー
- ロボット部門
協働ロボット、溶接ロボット、ミニロボット、大型ロボット、
パレタイジンロボット、塗装ロボット
- ロボマシン部門
小型切削加工機、電動射出形成機、ワイヤカット放電加工機、超精密加工機
- サービス部門
業績
2018年度(2019年3月期)
売上高
連結売上高: 635,568百万円 前年比87.5 %
各セグメント別
FA部門:2,110 億円(構成比 33.2 %)前年比 95 %
ロボット部門: 2,175 億円(構成比 34.2 %)前年比 95.5 %
ロボマシン部門: 1,150 億円(構成比 18.1 %)前年比 60.5 %
サービス部門: 918 億円(構成比 14.5 %)前年比 106.4 %
営業利益率
連結売上高: 163,297百万円 利益率25.7 % 前年比 -66,066 百万円
各セグメント別
セグメントごとの営業利益は未開示かと思われます。2017年度のアニュアルレポートにも記載がありませんでした。
営業業績の分析
“当期における当社グループを取り巻く事業環境につきましては、期の初めは需 要が概ね堅調に推移したものの、米中貿易摩擦の影響と前年度活発だった中国の IT 関係の一時的な需要がなくなったことなどから、期の後半を中心に極めて厳しい状況となりました。”
向先地域別売上高
売上割合
日本:23.5 %
米州:20.2 %
欧州:19.2 %
アジア:36.3 %
その他の地域:0.7 %
成長性
経済的動向
2019年のアニュアルレポートはまだアップロードされていないため、最新の動向についてはまだ不明です。ただし、2020年3月期の営業利益が6割減予測からわかる通り、景気の悪化による影響が鮮明かと思われる。
研究比割合
最新版のアニュアルレポートがアップロードされ次第確認します。
参考までに2017年度の研究費は52,956百万円で売上高(726,596百万円)に対して7.3 %となっている。従業員の1/3が研究者とだけあって、高い水準であることが分かる。
個人的考察
成長性について
以下は安川電機の企業研究ページにも同様の部分を記載している。
- 産業用ロボットなどの設備投資は景気に非常に依存されること
- 人件費の高騰によるロボットへの代替による需要
- 中国への輸出に関する疑惑
まず、景気の依存について。産業用ロボットを生産している会社すべてに言えることであるが、景気の依存は非常に大きい。例えば、過去のリーマンショックは安川電機の売り上げが△70億円、営業利益率が△3.1 %にまで落ち込んだ。(同じRobotBig4のうちの1つ)ちなみにファナックの売り上げもおよそ△30 %落ち込んでいる。
今後の景気がずっと安定するとは限らないので、注視する必要があると考えている。
次に人件費の高騰によるロボットへの代替による需要について。これは市場規模[4]から見ても間違いなくやってきそう。つまり、かなり長期的な成長余力もあるように思える。
最後に中国への輸出に関する疑惑について。これは中国製造2025[5]に少し関連する。これは売上先地域でも確認できるがアジアへの輸出が36 %ほど占めている(ただ、中国がどの程度占めているのかは不明)。さらに、現在の中国は産業用ロボットの自国生産を進めており、中国家電メーカー美的集団により、robotBig4の1つであるドイツ・KUKAの買収を2016年にも行っている[5]。私が思うことは中国への輸出が減るだけでなく、中国産の安価な産業用ロボットが国内に入ってくる可能性も十分にあり得るようになるのでは?という疑惑である。正直どの業種でも同じことが考えられますけどね。
ただ、個人的には国内メーカーでは非常に近未来的な経営をされているように感じる。例えば、自社生産したロボットを使って工場を自動化、少人数化、高生産化し、ロボットを生産するなど。これからのニーズに最も合った経営方針だと感じる。また、研究者割合の多さは企業の成長に大きく関係してくるため、大きな特徴だと思う。
時事問題
最近の大きなニュースは、2020年3月期の純利益が6割減少すると発表されたことが挙げられる。[6]これは主に中国への出荷の影響だと考えられており、米中貿易摩擦を発端に中国経済の減速による危惧から設備投資の減少が鮮明となり、その結果来期の純利益が前年比6割減と見込みである。ちなみにここ10年間で最低の水準となっている。
ちなみに、ファナックは株式投資家の間では大まかな景気の見込みをする上で重要な銘柄となっている。この理由は、景気が上向きの時、企業は設備投資を増やし、商品の生産量を上げようとする。反対に景気が下向きの時は、企業は商品が売れないので、設備投資を抑えるからである。
次に2018年11月に日経新聞で報道された中国総務省のダンピング調査である。[7]ダンピングとは輸出国で生産、販売される製品より、輸入した商品が市場の健全な競争力を阻害するほど安い価格で売られることで、この場合は中国で行内生産されるロボットよりファナックが中国に輸出するロボットが圧倒的に安いということになる。鉄やらタイヤやら散々やってきた癖に何を言ってんだって思いますね。
FA関連企業
参考文献
[1] https://www.fanuc.co.jp/ja/ir/annualreport/pdf/annualreport2018.pdf
[2]https://www.fanuc.co.jp/ja/ir/announce/pdf/financialresult201903.pdf
[3]市場規模は2035年までに5倍に。産業用ロボット業界の成長見込み
[4]中国製造2025とは 重点10分野と23品目に力 :日本経済新聞
[5]中国企業が買収、ドイツ・KUKA(クーカ)の産業用ロボットは何がスゴいのか |ビジネス+IT
[6]ファナック、中国不安濃く 今期純利益6割減 :日本経済新聞
[7]中国商務省、ファナックなど日系5社でダンピング調査 :日本経済新聞