安川電機株式会社の企業研究2018年度
安川電機株式会社の企業研究です。安川電機といえばrobotBig4のうちの一つですね。企業の理解を深めるために一連の情報をHPリンクとともにまとめてあります。この記事では投資家向け資料の連結決算概要から各セグメントの情報や考察を行いました。どちらかというと技術系の学生向けになっていると思いますが、事務系の学生にも役立つ情報をまとめてあると思います。
では、よろしくお願いします。
代表取締役
氏名
小笠原 浩
経歴
1979年 九州工業大情報工卒業
2006年6月取締役
2012年6月常務執行役員
2013年6月取締役常務執行役員
2014年9月取締役常務執行役員ICT戦略担当技術開発本部長兼技術開発本部ロボティクスヒューマンアシスト事業推進室長
2015年3月から取締役専務執行役員
2016年3月同社代表取締役社長に就任
代表メッセージ
常に世界一を目指す「技術立社」としての持続的成長を実現するとともに、新たなソリューションコンセプト「i3-Mechatronics 」を通じて、お客さまに新たな価値を提供します。
*i3-Mechatronics:総合的に(integrated)、知能的に(intelligent)、革新的に(innovative)の3つのiで生産現場と企業の課題を解決、ビジネスをさらに進化させるというコンセプト。
企業理念(グループ経営理念)
当社グループの使命は、その事業の遂行を通じて広く社会の発展、人類の福祉に貢献することにある。当社グループはこの使命達成のために、次の3項目を掲げ、その実現に努力する。
- 品質重視の考えに立ち、常に世界に誇る技術を開発、向上させること。
- 経営効率の向上に努め、企業の存続と発展に必要な利益を確保すること。
- 市場志向の精神に従い、そのニーズにこたえるとともに需要家への奉仕に徹すること。
創立年・資本金・株式公開・従業員数・事業拠点
創立年
1915年(大正4年)7月16日
資本金
306億円
株式公開
266,690千株
従業員数
連結15,287名(臨時従業員含む・2018年2月28日現在)
事業拠点
詳しい事業内容
- モーションコントロール
ACサーボモータ・コントローラ事業:電子部品や半導体部品などの高い精度が求められる生産機器に組み込まれる
インバータ事業:大型空調やエスカレータ・エレベータなどの社会インフラに使われる。
- ロボット
アーク溶接ロボット
スポット溶接ロボット
塗装ロボット
ハンドリングロボット
半導体・液晶製造装置 クリーン・真空搬送ロボット
→自動車関連市場を中心に様々な分野の生産現場にて溶接・塗装・組立・搬送などの自動化に貢献。
- システムエンジニアリング
鉄鋼プラント事業
社会システム事業
環境・エネルギー事業
産電事業
→安定稼働が必須となる鉄鋼プラント・水処理プラントなどの各種大型プラント設備や・大型クレーンを主な市場としている。
また、環境・エネルギー事業として、大型風力発電関連の電機品(発電機・コンバーターなど)、太陽光発電用パワーコンディショナも扱っている。
- その他
EV用モータドライブシステム
物流サービス
業績
2018年度(2019年2月期)
売上高
連結売上高: 474,638百万円(4,746億3,800万円)前年比-%
各セグメント別
モーションコントロール:2,054 億2,300万円(構成比43.3 %)前年比 - %
ロボット: 1,779 億9,500万円(構成比37.5 %)前年比 - %
システムエンジニアリング:594億6,300万円(構成比12.5 %)前年比 - %
その他:317 億5,500万円(構成比6.7 %)前年比 - %
*決算期の変更により、経過期間が変更されたため前年比は未算出
営業利益率
連結売上高: 497億6,600万円 利益率10.5 % 前年比 - 億円
各セグメント別
モーションコントロール:339 億700万円 利益率16.5 % 構成比65.6 %前年比 - 億円
ロボット: 172 億9,800万円 利益率9.7 % 構成比33.4 % 前年比 - 億円
システムエンジニアリング: 6,500万円 利益率0.1 % 構成比0.1 % 前年比 - 億円
その他:4 億4,600万円 利益率1.4 % 構成比0.9 % 前年比 - 億円
*連結売上の営業利益高とセグメントの合計値が一致しなかったので、各セグメントの構成比は合計値(517億1,600万円)から計算する。セグメント間の取引が加算されている可能性があり(不明)。
営業業績の分析
以下は2019年2月期本決算資料より抜粋である。
“当期における当社グループの経営環境は、期初に生産設備の高度化・自動化の需要が旺盛だった ものの、期の半ばからスマートフォン関連の需要に一服感がみられたことに加え、半導体関連の 設備投資需要が急減速する状況となりました。また、中国を中心に米中貿易摩擦の影響が拡大し、 製造業全般で設備投資に慎重な姿勢がみられるようになりました。 このような状況下、当社グループの業績は中国市場の減速影響を受けた一方で、自動車関連の 需要をグローバルで的確に捉えるなど、総じて堅調に推移しました。この結果、売上高については 過去最高となりました。”
各セグメントの状況については2019年2月期本決算資料のP5に記載されている。
向先地域別売上高
成長性
経済的動向
2019年のYASKAWAレポートはまだアップロードされていないため、最新の動向についてはまだ不明です。前年度(2018年)のYASKAWAレポートにセグメントごとに機会の欄(P20,22,24)に書いてあるのですが、1年前(2018年)と現在(2019)ではだいぶ状況が異なっているため、ここでは控えます。
例えば、中国のスマートフォン関連の需要による成長を見込んでいましたが、2019年第3四半期からスマートフォン生産の激減により、2019年2月期の売上、営業利益ともに下方修正されています。よって、最新のYASKAWAレポートがアップロードされ次第確認します。
研究比割合
2018年度の研究開発費は207.9億円(連結売上の4.38 %)となっている。
個人的考察
成長性について
- 産業用ロボットなどの設備投資は景気に非常に依存されること
- 人件費の高騰によるロボットへの代替による需要
- 中国への輸出に関する疑惑
まず、景気の依存について。これは安川電機だけの問題でなく、他の産業用ロボットを生産している会社すべてに言えることであるが、景気の依存は非常に大きい。過去のリーマンショックでも安川電機の売り上げが△70億円、営業利益率が△3.1 %にまで落ち込んだ。円高も重なったが、海外生産にシフトし、現在では安定(むしろ超優良企業)している。ただし、今後の景気がずっと安定するとは限らないので、注視する必要があると考えている。
次に人件費の高騰によるロボットへの代替による需要について。これは市場規模[4]から見ても間違いなくやってきそう。つまり、かなり長期的な成長余力もあるように思える。
最後に中国への輸出に関する疑惑について。これは中国製造2025[5]に少し関連する。これは売上先地域でも確認できるが中国への輸出が20 %ほど占めている。さらに、現在の中国は産業用ロボットの自国生産を進めており、中国家電メーカー美的集団により、robotBig4の1つであるドイツ・KUKAの買収を2016年にも行っている[6]。私が思うことは中国への輸出が減るだけでなく、中国産の安価な産業用ロボットが国内に入ってくる可能性も十分にあり得るようになるのでは?という疑惑である。正直どの業種でも同じことが考えられますけどね。
時事問題
最近の時事問題はファーウェイのCFOがカナダで逮捕されて、アメリカと同じようにファーウェイ製の製品を日本政府が排除した後にファーウェイから安川電機への発注を全凍結した話が新しい[7]。
参考文献
[1]2019年2月期本決算資料
https://www.yaskawa.co.jp/wp-content/uploads/2019/04/20190411.pdf
[2]決算補足説明資料(説明会資料)
https://www.yaskawa.co.jp/wp-content/uploads/2019/04/190411_haifu.pdf
[4]市場規模は2035年までに5倍に。産業用ロボット業界の成長見込み
[5]中国製造2025とは 重点10分野と23品目に力 :日本経済新聞
[6]中国企業が買収、ドイツ・KUKA(クーカ)の産業用ロボットは何がスゴいのか |ビジネス+IT